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新旧の溶接技術の融合を実現した奮闘と苦悩 株式会社吉村熔接所

みなさんこんにちは、e-yan通信部です。

 

春が過ぎ去り梅雨が目前となりましたが、みなさんはいかがお過ごしですか?

蒸し暑さで体調を崩さぬようお気をつけ下さい。

 

今回私たちが取材させて頂いたのは、「株式会社吉村熔接所」代表取締役の六ヶ所伸一さんです。

 

小学生時代に柔道をされ、厳しい稽古の中で「自他共栄」の精神を培ってきました。

その精神は現在もモットーとされており、作業に取り組まれております。

 

とても気さくで温かみもある方で、ご冗談やご自身の体験談などで場の雰囲気を和らげてくださりました。

 

 

取材を受けてくださった六ヶ所伸一さん

 

 

「こちらへどうぞ。」と誘導され私たちが入室した部屋には、なんと大量のフクロウが壁一面に描かれていました。作業場とのギャップがあまりにも大きく私たちは「えっ!」と驚きを隠せませんでした。

 

 

 

 

今回はフクロウたちが見守る中、私達e-yanは取材をさせていただきました。

 

 

 

 

今回のトピック

・そもそも溶接とは?

・六ヶ所さんが東大阪に来られた理由

・師弟関係型の技術習得

・よりよい溶接所の運営のために

・溶接でアート作品を創る

・e-yan、レーザー溶接を体験する

・学生へひとこと

・取材を終えて

 

 

そもそも溶接とは?

溶接は大きく分けて「融接」と「ろう付け」の二つがあるそうです。

融接とは金属を融点に達した他の物質に接合することを指し、ろう付けは溶接棒を溶かして他の物質を接合することをいいます。他にも溶射や摩擦での溶接などがあります。

 

吉村熔接所ではより多くのお客様のニーズを叶えるために昔ながらの手法の「ガス溶接」、広範囲の作業が可能な「TIG溶接」に加えて0.1㎜単位の精密な肉盛溶接が可能である「レーザー溶接」など様々な溶接機器とその技術を網羅しています。

 

 

六ヶ所さんが東大阪に来られた理由

六ヶ所さんのお祖父様が洋菓子と和菓子のお店をされていたことから「自分で何か作ってみたい。」と思い、宮崎市にてパン屋に勤務しました。しかし、どのようなパン屋であるべきか、自分に何ができるのかについて悩むようになりました。

 

そんな時、義母様に「大阪にきて工場を継ぐのはどうか」と声をかけられました。

義父様の兄である先代の社長さんが後継者を探していたのです。

 

当時は溶接業という全く異なる職種に対してではなく、馴染みのない土地での生活と「モノづくりの東大阪」における激しい競争に対して不安に感じられていたそうです。

しかし、六ヶ所さんは溶接所を継ぐことを決心され、2005年に吉村熔接所に入社されました。

 

東大阪に移住して間もなくに六ヶ所さんは九州と大阪の「言葉の違い」に苦しめられました。

町工場の方々との交渉など口頭でのやりとりが上手く行かず、宮崎に戻るべきではと考えられたこともあったそうです。

 

 

師弟関係型の技術習得

六ヶ所さんは入社当時からベテランの義父様の作業のご様子を見て技術を吸収されてきました。先代の方々は、多くを教えず「見て学べ」という昔ながらの職人気質の方々であるそうです。

 

教師と生徒の関係のような受け身の学習形態ではなく、能動的に技術を吸収していく師弟関係が六ヶ所さんの原点とも言えます。

 

しかし、見てすぐに習得できたわけでは決してありません。特にTIG溶接は熟練の技術を必要とする溶接方法であり、使いこなすのに約1年間かかりました。

 

その1年間は成果を出せずに苦しむ日々を送られたそうです。お客さんに、「製造業はこれからよくならないし、宮崎に帰った方が良い。」と言われたこともありました。

 

 

よりよい溶接所の運営のために

入社当時の吉村熔接所では昔ながらのガス溶接を主な手法として業務を行っていました。しかし、六ヶ所さんはその溶接方法に対して、「時代に合っていない」「このままでは限界を迎えるのはそう遠くないだろう」と危惧されていました。

 

そこで六ヶ所さんは、人脈とインターネットを用いた溶接機の情報収集、他県での溶接機の試運転、そして投資の交渉など業務内容の向上のために東奔西走されました。

その努力が実り翌年の2006年にレーザー溶接機を導入し、より精密な作業も可能となりました。

 

TIG溶接には余肉が大きい(補修のために作業時間が4~5時間、あるいは半日延びてしまう)や歪みの発生(熱の影響を受け金型等の破損を引き起こす)といった短所があります。それらを補うという意味でもレーザー溶接は不可欠の存在となっています。

 

六ヶ所さん自身が成果を実感できるようになった2012年に代表取締役に就任し、これまでの溶接技術を大切にしつつ、レーザー溶接という新技術を用いて新たな顧客の獲得、すなわち「新規開拓」を目指しました。

 

 

入社して間もなく苦難の連続でしたが、六ヶ所さんは自力で克服し吉村熔接所を大きく発展させました。その後も新規開拓のための挑戦を止めず、その結果溶接アートという新たなステージに踏み出しました。

 

 

溶接でアート作品を創る

みなさんは溶接アートをご存知ですか?溶接アートとは、その名の通り溶接技術を応用した創造的作品のことです。

 

六ヶ所さんとレーザー溶接の可能性をより多くの方に知ってもらうために「サンプル」という形でアピールし始めたのがきっかけでした。

 

 

 

 

六ヶ所さんは祝い事やその記念品のために「置物」や「キーホルダー」を製作されてきました。 製作の際は図面に従ってではなく、気の向くまま思いのままに作っています。

 

 

 

 

こちらは東京タワーのオブジェです。手のひらサイズではありますが、ズッシリと金属の重みを感じられます。また、網目状の骨格までしっかり再現されており完成度は極めて高いです。

 

このオブジェは六ヶ所さんのご友人のために製作され、東京での奮闘の日々を詰め込んだ記念の一品です。

 

 

 

 

こちらはカード立てのオブジェになります。

 

六ヶ所さんは過去に手作りバザー展にて、ストラップ付溶接アートを出品されたことがあります。その際に、値段を表示するためにこちらのカード立てが使用されました。

 

今回紹介したオブジェはほんの一部にすぎません。公式ホームページには個性豊かなオブジェが数多く紹介されています。ぜひ、下のリンクからご覧ください。

 

吉村熔接所公式ホームページ:http://www.yoshimurayousetsu.jp/

 

 

e-yan、レーザー溶接を体験する

吉村熔接所は新旧の溶接技術の融合を可能にするために、溶接機やクレーンなどあらゆる機器を取り扱っています。

 

今回六ヶ所さんは数ある機器の中から特別にレーザー溶接機についてご紹介してくださりました。

 

 

レーザー溶接機 ALM250

 

 

こちらはドイツ製のレーザー溶接機ALM250です。日本国内でも数台しかなく非常にレアな溶接機です。

 

非常に高額な機器のため、六ヶ所さん自ら展示会や同業者の方からあらゆる溶接機の情報を収集し、奥様や先代の方々を含めたすべての関係者の方と一緒に視察した上でレーザー溶接機を購入した経緯があります。

 

本社がドイツにあるのでメンテナンスには大変苦労しますが、現在の吉村熔接所には不可欠な存在であり手入れに手を抜くことはありません。

 

 

 

 

六ヶ所さんはその場でレーザー溶接の作業を実演してくださりました。

 

「こんな感じで作業をするんですよ。」とフランクに仰っていましたが、スコープと指先に注意を集中されているお姿から普段の作業中での緊張感が伝わってきました。

 

 

 

 

私、河野も六ヶ所さんのご指導の下でレーザー溶接機を用いた肉盛り作業に挑戦させて頂きました。

 

足元にはミシンと同じ足踏み型のスイッチがあり、それを底まで踏むとジジッと白いレーザーが照射されました。そこに一本の鉄を当てると、レーザーが鉄を溶かしながら火花を散らしているのが見えました。

 

溶接母体となる金属板を確認すると、表面には先ほどのレーザーで溶けた鉄が米粒十分の一ほどの大きさで山状に接着しており肉盛りが完了しました。

 

 

 

 

学生へひとこと

「若き力パワーを、自分を大切にしてほしい。」

 

学生時代にしかできないこと、具体的に述べると授業や課外活動など一つひとつを大切にして将来やりたいことが叶うようになってほしい。そんな思いが込められた一言でした。

 

学生時代の六ヶ所さんは将来やりたいことが明確ではありませんでした。だからこそ、学生である時点で将来のビジョンを持っていることに対して心から称賛し、この言葉が贈られました。

 

 

 

 

最後に、フクロウの壁紙を背景に集合写真一枚を撮らせて頂きました。

貴重なお話、誠にありがとうございました。

 

 

取材を終えて

 

感想

 

河野

六ヶ所さんは入社当時から「このままではこの溶接所に先はないだろう」と危機感を感じ、東大阪での生活に苦手意識を抱えながらも状況の改善のために汗を流されました。その努力が実りレーザー溶接機の導入に至りました。

 

その奮闘が無ければ、TIG溶接の弱点をカバーできず、溶接アートも創られることもなく、現在の吉村熔接所はあり得なかったでしょう。このことから、ピンチに目をそらさず挑戦し続けることの大切さを学びました。

 

同時に、「指示待ち」の若者の存在が問題視される現代において、私たち学生は受け身の姿勢からの脱却を求められています。「師弟関係型の技術習得」でも少し触れましたが、六ヶ所さんは苦しみながらも義父様の技術を見て吸収されました。その姿勢はぜひ見習うべきだと感じました。

 

 

福本

私自身、取材先でどのように立ち振る舞えばよいのか分からず臨んだ初めての取材だったのですが、六ヶ所さんに気さくに話かけていただけたので緊張が少しとけました。

 

私には昔ながらのガス溶接のイメージが強くあったので、レーザー溶接の存在及びそれを応用した溶接アートというものに驚きを隠せませんでした。

 

今回の取材を通して、実際にお伺いしてお話を聞いてみないと分からないことがあるということを感じ、行動することの大切さを学びました。また、自分のイメージとの違いなど新しい発見をすることが楽しいことだということも気づくことが出来ました。そういった意味でも今回の取材は、自分の経験、成長につながったと思います。

 

 

取材先

取材先:株式会社吉村熔接所

代表取締役:六ヶ所伸一

所在地:大阪府東大阪市柏田西1-2-26

TEL:06-6722-1860

FAX:06-7632-4220

 

公式ホームページ:http://www.yoshimurayousetsu.jp/

 

公式Facebookページ:https://www.facebook.com/yoshimurayousetsu

 

吉村熔接所ブログ:http://yoshimurayousetsu.jp/blog/

 

 

取材メンバー

近畿大学 総合社会学部 3年 河野隼士

近畿大学 総合社会学部 2年 福本姫菜

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