河内国一之宮 枚岡神社
梅の蕾が開き始めた今日この頃、皆様はどうお過ごしでしょうか。
2月も終わりを迎え、日の照る時間もだんだんと長くなって来ましたね。
しかし寒い日々はまだまだ続きそうですので、体調管理には気をつけて下さい。
さて今回e-yan通信部は、近鉄奈良線の枚岡駅から西に位置する、『枚岡神社』の取材に行って来ました。
そしてこの度は、禰宜(ねぎ)をしておられる『山根眞人』さんにお話を伺いました。
ちなみに禰宜とは神職のひとつであり、神社の最高責任者である宮司(神主)を補佐する役割の人のことを表すそうです。
枚岡神社の歴史・御祭神
皆様は、枚岡神社の歴史をご存知でしょうか。
枚岡神社が創祀されたのは、皇紀がはじまる3年前と伝えられています。
皇紀というのは、初代天皇である神武天皇が大和橿原で即位したときから始まり、現在は皇紀2675年になるそうです。
主祭神『天児屋根命』(あめのこやねのみこと)は第一殿に祀られており、中臣氏の祖神といわれています。
第2殿には『比売御神』(ひめみかみ)が祀られており、天児屋根命の后神でもあります。
比売御神は、夫神を助ける、子を強く育てたことから良妻賢母として仰がれています。
第3殿には、『経津主命』(ふつぬしのみこと)が祀られており、もともとは「香取神宮」の御祭神でした。
経津主命は国譲り神話で出雲の国に派遣された神で、武運守護の神として祀られています。
第4殿には『武甕槌命』(たけみかづちのみこと)が祀られており、もともとは「鹿島神宮」の御祭神でした。
武甕槌命は国の平定における武力と権威の象徴ともいえる神様です。
枚岡神社は元春日とも呼ばれることがあります。
そう呼ばれる所以は、天児屋根命・比売御神を現在の「春日大社」へと分霊したからだそうです。
後に春日大社から経津主命・武甕槌命が枚岡神社へと分霊され、同じ神々を持つることになりました。
ところで、皆さんはなぜ枚岡神社に鹿の石像おかれているか不思議に思ったことがありませんか?
その理由は、武甕槌命が鹿島神宮から春日大社へと白鹿に乗ってきたといわれているからです。
このことから枚岡神社では鹿の石像がおかれているそうです。
社殿に向かって右側が父親で左側が母親と子供だそうです。
父鹿は底知れぬ気迫があり、母鹿と小鹿は対照的に愛嬌があり、心が和む気がしました。
また、毎年の建国記念の日には、神武天皇を称えるための紀元祭が行われています。
こちらは今年の建国記念の日に遙拝所にて国歌を斉唱されている様子です。
実際に今年の紀元祭に参加してみたのですが、その神々しい行いに思わず言葉を失ってしまいました。
秋郷祭
枚岡神社では、紀元祭だけでなくほかにも多くのお祭り事や神事が行われています。
秋郷祭やお笑い神事などは、皆様も一度は耳にされたことがあるのではないでしょうか。
秋郷祭とは、10月14日・15日の両日に秋の実りを感謝し、その心を捧げるため行われるお祭りだそうです。
秋郷祭では地域ごとで感謝の気持ちを込めてつくられた太鼓台を神様に見ていただいたのちに奉納するのですが、神様にお見せする際の太鼓台の迫力ある姿には、おそらく皆様も圧倒されることでしょう。
感謝の気持ちを捧げるお祭りであるにも関わらず太鼓台をぶつけたり壊したりなど、とても荒っぽいかたちで行われるのです。
枚岡神社の秋郷祭では、太鼓台は大変大切に奉納されています。
四国の新居浜の祭りでは太鼓台をぶつけたりとても荒っぽい形でおこなわれます。
(※3/1 加筆)
罰当たりな行動だと思われるかもしれませんが、これにはちゃんとした理由があります。
荒っぽく元気よくやることで神様に喜んで頂き、一度壊して新しいものにつくりかえることでものを生まれ変わらせているのです。
この考えかたを、『常若』(とこわか)と言うそうです。
また神社の行いの根本は『米の実りを願う』ことで、一年を通しての行事はすべてこれにつながっています。
冬は粥占神事(かゆうらしんじ)で一年の気候を占い、春に豊作を願い、夏に収穫をし、秋の秋郷祭で収穫できたことを神様に感謝をするそうです。
日々の実りは私たちだけのおかげではなく、自然の恵みなど様々な要因のおかげなのではないでしょうか。
それらを忘れずに、敬い・感謝することが大切なのだと思います。
皆さんもそのことを時々でいいので思い出してみてください。
お笑い神事
続いてはお笑い神事についての紹介です。
正式名称は『注連縄掛神事』(しめかけしんじ)で、12月23日に宮司の「アッハッハ」の笑い声につづいて神職・氏子総代・参列者が大きな声で笑うという珍しい行事です。
これは天の岩戸開きの神話を基にしたのが由来だそうです。
天の岩戸開き神話とは
“太陽の神天照大御神が天岩戸に閉じこもってしまい、世界が暗くなってしまいました。
そこで神々は、天照大御神を外に出そうとある行動を起こしました。
天宇受売命が岩戸の前で踊り、それを見ていた神々がおおいに笑いました。
それを不思議に思った天照大御神が岩戸の隙間から顔をのぞかせると、天手力男命が天照大御神の手を取って外へお連れになりました。
こうして世界に光が戻りました。”
という神話です。
心の底から笑い、一年間の色々な出来事を吹き飛ばすことで豊かな新年を迎え入れることができるようになると言われています。
お笑い神事は、先人から受け継いだかたちをそのまま次の世代へと伝えられているため、それによって気づきを生みだすこともできます。
このように先人の考えを受け継ぎ伝えていくことを『枚岡神社』では、とても大切にされています。
この神事は東大阪市無形民俗文化財に指定されており、後世に受け継がれてゆくべき大切な文化だと思います。
宮司の普段の活動内容
宮司さんの活動は全く同じことをする日は一日もないそうです。
一年に60を超える行事があり毎日毎日同じことを行う日はなく、また四季を大切にしているということがあるからです。
掃除をするにしても一日一日落ち葉の色や形は違うので、同じ行いをすることはないそうです。
しかし、その中でも毎日行われることがあります。
それは、朝拝です。
朝拝の中で、毎朝神様に向けて掲げている目標を述べています。
朝拝をすることで本来の神社としての在り方を再確認、および神様に日頃の感謝の気持ちを示すという役割を果たしているのです。
神社のあるべき姿というのは気持ちを整える場であり、魂を再生する場であることです。
神社とは
皆様は神社に参拝された場合、お祈りされることがあると思います。
この行いは、気持ちを整えるためには非常に重要なことなんだそうです。
『神道』では、“何ごとでも受け止める” “他を尊敬する” “間違いは間違いだと認める”という考え方を大切にしています。
そしてこれらの考え方は、『中今』(なかいま)という神社としての構え方に繋がっているのです。
過去・現在・未来という時間の流れの中で、現在が最も価値があるという考え方だそうです。
「今」を一生懸命生きることで、自分を最大限に表現することができ、「今」が人生を歩んでいくための大切な一歩なんだそうです。
また神社には“物を売っていない”という特徴があります。
お守りを神社で購入することができますが、お守りとは神の代わりであり、決して営利目的で物を販売しているわけではありません。
あえて神社の商品というのをあげるとすると、その場でしか味わうことのできない風景・技術・魂がそれにあたるということです。
『枚岡神社』では、後世に残すべき香りのある風景を提供しています。
香りのある風景とは、先人から受け継いできた伝統的な文化のことを言います。
“直接触れることができない文化”“目に見えない大切なもの”を次の世代へと繋いでいくことを『枚岡神社』では大切にされているのです。
先人からの思いを受け取りに、一度、神社に足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
何か新たな気づきが生まれるかもしれません。
梅林
『枚岡神社』に訪れるのであれば、3月の上旬に訪れることをお勧めします。
『枚岡神社』にある広大な梅林がピークを迎えるのが3月の上旬だと言われており、その様子はまさに香りのある風景そのものです。
なぜここに梅林が広がっているのか?
現在梅林が広がっている場所には元々お寺があったそうですが、明治時代に神仏分離令が出されたためにお寺を取り壊すことになりました。
その跡地に植えられた梅の木々が今もなお大阪最古の梅林として現存しているのです。
また、2001年に環境省が選定した「かおり風景100選」のひとつに選ばれています。
この梅をお題として、一句詠んでみるのも風情があり良いかもしれません。
ちなみに、禰宜の山根さんも俳句が趣味だそうです。
山根さんからのメッセージ
この度の取材の中で、山根さんから伝えられた思いを皆様にもお伝えしたいと思います。
『現在、神社は全部で8万社ほどありますが、全体の1割ほどしか世間からは注目されず、管理も行き届いていないのが現状です。
私たちは神社、すなわちそこに祀られている神様を粗末にしてはいけないのです。
なぜならそれは、生きていくうえで必要なかけがえのないものだからです。
私たちは先人から頂いた、「思い」「願い」「命」を次の世代へと伝えなければなりません。
皆様の命は、多くの人の努力により存在しています。
だから、命を粗末にしないでください。
その「命」は、あなただけの力では動いているのではなく、これまでの時の中で「命」を大切にした人の力とともに在り続けているのです。』
取材を通じて
丸田
「私自身、枚岡神社に行く機会があまりなく知らないことが多くありました。
2678年もの歴史を持ち、河内国一之宮と呼ばれる神社が東大阪にあったことには驚きました。
神社には心を落ち着け、精神を安定させるには適した場所だと私は思います。
もしみなさんが悩んでいることがあれば、神社に行ってみてはどうでしょうか。」
横山
「山根さんのお話を通じて、神社とは本当に失ってはいけない大切な場所なのだと思いました。
教えて頂いた神社の歴史・在り方・構え方などは普段知ることができない貴重なものばかりでした。
その中でも、中今という今を一生懸命に生きる考え方が一番心に響いたため、今後はそれを念頭に置き日々がんばりたいと思います。」
北
「枚岡神社さんを取材させて頂いて、今まで神社を高貴なものだと感じあまり馴染みがなかったのですが、神社で行われる行事は特別な人に向けてだけではなく、全ての行事は米作りに繋がっていて、私たち庶民のために行われているということで、今までより身近に感じることができました。
私は一年に初詣でしか神社を訪れていなかったのですが、今回取材させて頂いて、行事がない時でも神社に行き、一日一日違う様子を感じたいと思いました。」
取材先:枚岡神社 禰宜 山根眞人さん
住所:579-8033 東大阪市出雲井町7-16
HP: http://www.hiraoka-jinja.org/
取材者:
丸田邦英(近畿大学総合社会学部・環境系専攻 2回生)
横山貴一(近畿大学総合社会学部・環境系専攻 1回生)
北英里香(近畿大学総合社会学部・社会マスメディア系専攻 2回生)
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