■クリーニング事例集■


衣料品とクリーニングで注意する点をまとめてみました

製品の特性に起因する事例
製造品に起因する事例
副資材の品質に起因する事例
使用条件に起因する事例


【製品の特性に起因する事例】

絹製品のフィブリル化

 絹製品は、クリーニングによって部分的或いは全体的に脱色したように白っぽくなることがあります。
 絹は摩擦によってフィブリル化が起きるため、商業クリーニングでは形態保持と染色保護上、通常は穏やかなドライクリーニングにします。
 しかし洗浄・乾燥やシミヌキにおいて擦れが生じることがよくあります。
 特に染色の濃い製品は光沢が変わったり、白っぽく見えることが多いようです。
 また、最近では海外で価格を押さえて製作化されるためか、品質の粗悪なものがよく見受けられます。
 さらには、この現象を活かして「サンドウォッシュ加工」とか「ストーンウォッシュ加工」を施し、ピーチスキン調にして差別化を図った商品も出ていますが、それがかえって絹の寿命を縮め、品質の不安定さを生んでいるようです。


絹製品のウォータースポット現象

 絹製品のなかでも、ストーンウォッシュシルクは、この現象を起こしやすいようです。
 この種の生地は、スチームを使ってシミ抜きをするとその部分が白っぽくなったり、ウォータースポットと呼ばれる輪ジミが発生します。
 また、汗などの水溶性物質が残留している場合は、湿気で目立つようになったり、汚れが付いたら処理が非常に難しい素材です。

強撚糸織物の収縮

 シフォン、デ・シン、ジョーッゼットなど、撚りの強い糸を用いた平織物のうち、特に絹、羊毛素材のものはドライクリーニング液中の水分や、仕上げのスチームの影響で糸が膨潤、その後撚りが戻って収縮したり変形が生じることがあります。そういう意味から水洗いは絶対に禁物です。


薄起毛製品の毛羽落ち

 絹や新合成の同製品は、独特の質感があるが、薬品や物理的処理で無理にやせ細らせ劣化させられているともいえます。
 起毛は摩擦に弱く、特にブルゾンのようなラフにきるアイテムに使われるのは問題だと思っています。

テンセルの外形変化

 テンセルに限らず、薄起毛製品は起毛の乱れで色ムラ状になりやすいものです。
 着用やクリーニングで衿、袖など摩擦を受けやすい箇所の色調が濃く見えるときは、起毛が脱色している場合もあります。テンセルは天然パルプを原料としていてレーヨンに似ていますが、レーヨンと違い、寸法安定性が優れたところもあります。


絹、新合繊の目寄れ

 薄手の織物は、織糸が部分的にずれて糸密度が乱れ、この現象になります。目寄れは、糸密度の低い生地や過剰に柔軟・減量加工した生地に起こりやすく、最近では超極細繊維使用のポリエステル新合繊にも多く見られます。
 着用中の摩擦で衣服の上腕部や肩甲骨、肘などに発生している場合が多く、シミヌキなどの部分的力で起こる場合もあります。

モヘヤ混紡ズボンの破損

 アンゴラ山羊から取った毛(モヘヤ)は元来少し剛く、屈折や摩耗に弱い性質があり、立ち座りするときに椅子の縁にこすられたりして膝の後ろや裾の折り返しあたりが擦り切れることがあります。
 クリーニングの際は、ネットを使用するなどして摩擦作用をできるだけ抑える必要があります。
 また、折目加工などを行うと裂傷を早める原因になります。組成表示にモヘヤ混紡と表示されていないケースもあり、感触で見極めるしかありません。


新合繊のピリング

 一般にピリングは合繊と毛の混紡製品や獣毛製品に起こり、ポリエステル製品には見られなかったのですが、最近の新合繊は、極細繊維が使われるようになった関係でこの現象が発生しやすくなっています。
 従来の丈夫なポリエステルのイメージを捨て、デリケート素材として認識する必要があるでしょう。

ラメ糸使用製品の変色

 ラメは一般的にポリエステルフィルムにアルミニウムを真空蒸着しており、このアルミニウムが汗、しみ、酸・アルカリなどで変質したり光沢が変化したりします。
 摩擦や屈曲にも弱く、袖口などは剥離することがあります。


アクリル長繊維製品の伸長

 この製品は、熱に対する挙動が微妙で、二次転移点(湿熱80℃、乾熱120℃)で極端に柔らかくなる傾向があり、外力がかかった方向に変形します。
 ハンガーに吊り下げた状態でスチーム乾燥すると、自重がかかるため、特別に外力が加わらなくとも伸び切ってしまいます。

ポリプロピレン中綿の収縮

 繊維のなかで最も軽い特徴があるため中綿で使われやすいが熱に弱く、乾燥や仕上げ熱で収縮することがあります。
 品質表示に注意し、同製品が使われていれば40℃以下の低温で乾燥・仕上げをしなければなりません。


塩化ビニル系合成皮革の硬化

 合成皮革は、塩化ビニル系やウレタン系、ナイロン樹脂を生地表面に塗布して天然皮革の銀面に似せてあります。
 このうち塩化ビニル系のものは、ドライクリーニング溶剤で可塑剤が溶けて硬化したり、機械力でひび割れを生じたりします。そのため塩化ビニル系のものはウエットクリーニングにします。
 一時期市場からなくなった素材ですが、インポートもので復活、品質表示がないためトラブルになりやすくなりました。

ポリウレタンコーティング製品の剥離

 熱で収縮しやすく、時間を経れば脆く、べとつくようになる(経時劣化)性質を持つ同製品は、見た目は異常なくともクリーニングによって剥離することがよくあります。
 ポリウレタンの製品寿命は、普通2〜3年で、長くて5年、これを消費者はご存知ないため、購入後数年経ってからクリーニングトラブルに遭遇します。
 私見ですが、着用に関係なく経時劣化を起こすような製品については、販売時点で保証期限を明示すべきではないかと考えます。


フォームラミネート製品の剥離

 編み物または織物にウレタンフォームを接着させた同製品は、ドライクリーニングによって基布とウレタンフォームが剥離することがあります。
 フォームラミネートはポリウレタン樹脂にスポンジのような細かい気泡を作り、薄い層にして編物・織物に接着加工してあります。
 接着剤はドライクリーニング溶剤で軟化・溶解し、そこへ機械力が加わると剥離しやすくなります。

オイルクロス製品に風合い変化

 綿または綿・ポリエステル混紡生地の表面にポリウレタン樹脂やアクリル酸エステルをコーティングして油を塗り付けたような感じを与えています。
 この製品は、ドライクリーニングや水洗いによって、コーティング剤が脱落して光沢やぬめり感が消失したり、風合いが変わったり、撥水効果が低下したりすることがあります。
 それを防ぐには穏やかな洗浄方法を取らざるをえないのですが、オイルクロスには大気中の塵埃や油性汚れが付着・吸収しやすい性質があるため、穏やかにクリーニングすると汚れが十分落ちないという苦情が逆に生じることになります。


フロック加工製品のフロックの脱落

 基布の上に接着剤を塗布し、その上に短い繊維を電気的に整然と植毛している同加工製品は、接着剤を付着させているので、種類によってはドライクリーニング洗浄中に軟化・溶解し、機械的な摩擦でフロックが抜けてしまうことがあります。
 また着用中や箪笥などの保管中に接着剤が劣化したり、シミヌキの際に溶剤でフロックが抜けてしまうことがあります。

オパール加工シャツの破れ

 この加工は2種類の繊維のうち、一方の繊維を薬品で部分的に溶かすことにより、透かし模様を作っています。
 綿・ポリエステル混紡の生地に、酸性の糊で模様を印捺して綿を溶解させポリエステルだけを残し、模様を浮き出させたワイシャツの事故事例があります。
 模様部分は他の部分より熱の影響を受けやすくなり、仕上げ温度に耐えられず、溶解したのです。
 その他柄の境目が摩擦で乱れやすく、繊維が抜け落ちるときがあります。


顔料樹脂加工製品の変退色

 顔料樹脂染料は普通の染料と違い、繊維の種類を考慮して選択する必要がないため、多数の繊維に使用されています。
 顔料捺染は顔料の粒子を合成樹脂の糊と練り合わせ、プリント加熱することで樹脂が硬化、顔料粒子が布の表面に固着されています。
 染色が裏面までくっきりと施されてはいません。クリーニングの際、顔料接着に使われる合成樹脂がドライクリーニング溶剤に溶解する場合、顔料も同時に脱色し変退色を生じます。
 一般的に赤が変退色しやすく、次いで黄、青の順です。染色堅牢性もよりますが、基本的にはウェットクリーニングをした方が間違いありません。

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【製造品に起因する事例】

濃色の絹製品の色泣き

 黒の絹地と白の絹地が色合いよく縫製されたワンピースを取り扱い表示通りに石油系ドライクリーニングしたところ、色泣きが発生することがあります。
 染色堅牢度の低い生地が使用されていたのですが、本来着用中に下着に移るような素材は使うべきではなく、特にイタリアのインポートものに度々見られます。
 また、濃色の皮革を淡色のものと組み合わせると必ず色泣きするようです。


プリーツの消失

 絹のブラウスやワンピースの襟回りに総プリーツが施されている製品で、プリーツが垂直に垂れて広がる部分の折り山が甘くなるといったトラブルが時々あります。
 総プリーツのスカーフも極めて扱いが難しく部分的なシミヌキは行えません。
 絹や綿、レーヨンなど熱可塑性のない素材にこうした加工を行うこと自体が無理なことでしょう。

新合繊の昇華移染

 新合繊だからおこるといった事例ではないのですが、ポリエステル用の一部の分散染料には昇華しやすいものがあり、特に極細繊維、超極細繊維の場合は染料を多量に使用する関係で、昇華によって色柄の移染が発生してしまいます。
 この現象は反物の状態で保管したり縫製後の製品積み上げ時の発生が多いのですが、クリーニングでアイロン仕上げ時に移染が起きた事例があります。


モール糸使用製品の糸抜け

 花芯の周りに一面に短い毛羽を撚りつけた飾り糸のモール糸は、華やかさを出すために生地表面にモール糸を長く浮き出させています。
 そのため、着用中にちょっとした突起物に引っかけたり、ドライクリーニング中にホックやファスナー、バックルなどに引っかかりやすく、それを防止するため裏返しにして目の細かなネットにいれて短時間処理しますが、これも限度があります。

原反じわ

 原反加工時などついたシワを修正して製品化したものはクリーニング時の水分・熱・揉みによって緩和作用を受け、シワが再び浮き出してくることがあります。
 原反じわは、縫い目を境にしてシワは連続せず、縫い目部分から裏の縫い代の方へシワが続いていることで判断します。
 これが出た場合、乾熱アイロンで直ることもあります。しかし、クリーニング後、シワ加工製品と区別がつかない場合があり、シワ加工製品には必ずその旨を表示する必要があるでしょう。


汗と日光の複合作用による変退色

 屋外で着用中に汗をかいたり、日光に長く当たると汗の成分が還元漂白作用を起こし、変退色を引き起こします。
 衣服の表側の肩や背中あたりが多く、ピンク色や紺色の綿製品に良く見られます。
 しかし、汗の成分は体質や食生活、運動量など個人差が大きく、同一商品でも起きる場合と起きない場合があります。

ガス退色

 アセテート、ナイロン繊維に使用される分散染料には、酸化窒素ガス、塩素ガス或いはそれらと光の複合作用で化学反応を起こし、染料の結合状態が変化し、変退色するものがあります。
 この現象はガス、光に触れる部分のみ変退色が現われ、影響を受けやすい色は黄、赤、青および紫、ピンクです。


エンボス加工製品の凹凸の消失

 この加工は、熱可塑性繊維に熱硬化性樹脂を付着させ、その樹脂のセット効果で形を付けたり或いはポリエステル、ナイロンなどを凹凸模様のある加熱したエンボスカレンダーに通して凹凸が付けられます。
 使用されている樹脂やカレンダーの加熱・圧力条件によってはドライクリーニング洗浄だけで凹凸が消失することもあります。
 またシミヌキや仕上げのプレス・アイロンの熱でも凹凸が消失するものもあります。

ニットのねじれ

 ニットに使われる糸の撚りや編み方によっては、ねじれを起こす要因を潜在的に持っており、クリーニングでねじれが発現するものがあります。
 単糸使いで天竺編みのものに発生しやすいようです。この現象は製品の欠点であり、クリーニングでは防ぎようがありません。


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【副資材の品質に起因する事例】

ボタン・ビーズの溶融・溶解

 ボタンやビーズなどの副資材には各種の樹脂がよく使用されています。
 樹脂のなかには熱に弱いものやドライクリーニング溶剤に弱いものがあり、溶解や溶融の恐れがあります。
 熱に弱いボタンはナイロン、パール、アセチ、ABS・AS樹脂、スチロールボタンであり、ドライクリーニング溶剤に弱いのはパール、アセチ、ABS・AS樹脂、スチロールボタンです。しかし、衣服に付けられた付属物を一つ一つ、クリーニング前に耐熱性や耐溶剤性をチェックするのは至難です。
 最近は主素材だけでなく、ボタンなどの副資材のトラブルが増えてきていて、製品化時点で耐熱性や耐クリーニング性を十分に吟味し、アフターケアを意識した繊維製品作りが望まれます。


スパンコールの変色

 スパンコールの種類によっては、着用やクリーニングでの摩擦によって樹脂が剥離し、外観や光沢が変化し、また着用中の汗や酸・漂白剤などでアルミニウム変質したりドライクリーニング溶剤で溶解する樹脂もあります。
 過度のスチームやアイロンは避ける注意が必要です。

金属製付属品による変色

 衣服をCLに出した後の保管で、金属製ボタンや付属品の周辺が変色することがあります。
 これは真鍮の金属イオンが長時間の間に染料の一部と置換反応を起こしたものと思われます。
 湿潤・加熱状態で生地の一部を数時間接触させ、金属ボタンや付属品が変色させるかどうか確認することができます。


ワイシャツの衿芯の収縮

 Yシャツの芯地は高温洗浄・プレスで収縮が増加する傾向にあります。
 これは使用されている接着剤にも影響され、ポリエチレン系の接着剤を用いたものは、同系のものより収縮度合いが大きくなります。但し接着強度自体はポリエチレン系の方がしっかりしています。

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【使用条件に起因する事例】

パーマ液による変退色

 パーマ液は一般に毛髪を軟化させる物質を含む第1液とそれを中和する第2液がありますが、両液とも漂白性のある物質で衣類に付着すると染料を変質させ変退色を起こします。
 但し還元性が弱いので付着してもすぐには変化がおこらず、数ヶ月で脱色が現われてきます。
 パーマ液は水に溶けますがドライクリーニング溶剤には溶けない性質があります。


化粧品による変退色

 整髪料や香水など液状化粧品に含まれるアルコール化合物は、染料を溶かしやすいため衣服に付着すると染料が侵され、クリーニングで染料が流れ出て変退色を起こすことがあります。
 パーマ液同様、水で濯ぎ出す必要があります。

蛍光増白剤の分解による変退色

 蛍光増白剤は白さを強調したり、色調を鮮明にしますが、日光堅牢度が低く分解しやすいです。
 クリーニング前は気付きにくくても、汚れが除去されれば蛍光増白剤が分解している箇所としていない箇所がはっきりしてきます。
 クリーニング前に衿表と裏、ポケットの表と内側などの日光を受けやすい部分と受けにくい部分の色差をよく確認しておくことが重要です。


蛍光増白剤の付着による変退色

 蛍光増白されてない衣服に蛍光増白剤入り洗剤を使用したことで染色物が変色したり退色して見えることがあります。
 綿製品は吸収しやすく、ベージュやサーモンピンクなど赤系染色品は変退色して見える傾向があります。
 ブラックライトで増白剤の付着具合が確認できます。

酸の付着による破れ

 トイレの洗浄剤には希塩酸や硝酸、バッテリー液には希硫酸が含まれ、衣服に付着したまま放置されると繊維が脆化し、破れを生じます。
 付着時に水にすすいで置くことが必要です。


腕時計によるワイシャツの袖口の破れ

 腕時計の金属ベルトやブレスレットの金属イオンの付着が触媒となり、洗浄の際に使用する酸素系漂白剤を分解、綿を脆化して袖口の破損を呼ぶことがあります。
 同じ現象は鉄サビの付着でも起こります。

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